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【セッションレポート】WAF2019|UPDATA!

2019年11月22日 ウイングアーク1st株式会社 WAF事務局主催の 「WAF2019|UPDATA!」がザ・プリンスパークタワー東京にて開催されました。
当カンファレンスのテーマは「データとヒトがつくる“次代”」
データとヒトの双方がどのように繋がり社会や組織をアップデートしていくのかを考えるための当カンファレンスにて、弊社代表の北川が登壇させていただいたセッションの内容をご紹介致します。

世界を変える3人のトップリーダーに訊く~テクノロジーで巨大産業をアップデート~

モデレーター:
Smartly.io(https://www.smartly.io/
Head of Sales, Japan
坂本 達夫氏(以下 坂本)スピーカー:
キャディ株式会社(https://caddi.jp
代表取締役 加藤 勇志郎氏(以下 加藤)株式会社スマートドライブ(https://smartdrive.co.jp/
代表取締役 北川 烈(以下 北川)

−− セッション前に −−

当セッションは、タイトルが「世界を変える3人のトップリーダーに訊く」だったのですが、今回もともと登壇予定だったUnipos株式会社 代表取締役社長の斉藤 知明氏が、ご家族のハッピーな事情で急遽いらっしゃることが出来なくなり、
当日はモデレーターを務めるSmartly.ioの坂本達夫氏、キャディ株式会社代表取締役の加藤勇志郎氏、そして当社、株式会社スマートドライブの北川烈の3名でのセッションとなりました。


何をしている企業のトップリーダーか

加藤

キャディ株式会社は製造業における受発注プラットフォーム「キャディ」を運営しております。

私はもともとコンサルティングのマッキンゼーという会社におりまして、そこで大手メーカーの調達改革というのをずっとやっていた関係で、ここの課題をみつけて、共同創業のCTO小橋と一緒にキャディをはじめました。

企業のミッションとしては「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ということです。モノづくりって、日本では約180兆円の市場規模があるんですが、その中で調達は120兆くらいの規模があるんです。それはつまり、町工場がそれだけのモノづくりをしているということなんですが、実は30年で半分以上の町工場が廃業していて、長年続く構造上のしがらみで本来もっている強みを発揮できずに経営の危機に追いやられている個社が、その力をちゃんと発揮できる仕組みをいかにつくっていけるかというところを企業理念としておいています。

「設計、調達、製造、販売」というバリューチェーンのなかで、調達というところはものすごく大きい市場でありながらイノベーションが100年以上おきていないと言われています。そこにイノベーションをおこしていく、というのをやっています。

課題として今一番フォーカスしているところが、発注者と受注者の最適なマッチングです。実は発注者って平均一日約400点くらい、いろんなものを買うんですが、受注側は相見積もりをとられるので2割くらいしか受注できないと言われていまして、その両側のマッチングを高め、最適発注でコストを下げる、管理工数を下げる、ということをやっています。

北川

株式会社スマートドライブはコーポレートミッションが、「移動の進化を後押しする」でして、移動にまつわる様々なIoTデバイスからデータがあつまるモビリティ データ プラットフォームを展開しています。

自社でIoTデバイスも作っており、シガーソケットに挿すだけで車がコネクテッドカーになり、そこで集めた移動に関するデータを解析できるようになります。

また、ドライブレコーダーであったり、タイヤの空気圧センサー、バイクにつけるセンサー等、そういうものを開発している企業様と提携して、様々なタイプのデータを収集しています。

事業面では大きく分けると4つのサービスがありまして、最初の3つはBtoB、BtoBtoC、BtoC、という領域でのSaaSサービスを、我々のデータプラットフォームの上に、自社サービスとして展開しています。

BtoBでは車両にまつわる課題を解決するクラウド型車両管理システム、BtoBtoCではドライバーさんのエンゲージメントを高めるサービス、最後にBtoCで家族の安全運転を見守るソリューションというものがあります。

先ほど申し上げた様々な弊社のIoTデバイスで収集した情報以外にも、自動車メーカーと提携して車やバイクから直接データを預かったり、マスキングされた状態で事故情報を弊社のモビリティデータプラットフォームに収集し、様々な軸でデータの分析をしています。

いま一番面白い成果が出ているのが事故リスクについてで、ある方の運転を一日30万通りくらいのデータのポイントに分けて、機械学習をして、2週間くらいデータをとると、その方が1年以内に事故を起す確率がかなりの精度でわかったりします。これらのPlatformの分析技術を様々な企業に提供するPlatformビジネスが4つ目の事業となります。

 

この領域でビジネスをやろうと思ったきっかけ

はじめにモデレーターの坂本氏がまず投げかけた質問は、2人とも30歳前後という若さで、上記紹介にあるような「渋い領域」をビジネスの場に選んだのはなぜなのか?ということ。

加藤氏は、以下のような理由を上げています。

  • 学生時代から起業を意識しており、その際「大きなことを成し遂げるためには、大きな市場で深い課題があり、かつグローバルで戦える領域が良い」という思いから、それを探すために前職の会社に入ったという経緯がある。
  • コンサルティングをしていく中で、製造業の市場の大きさと、調達という分野の未開拓のポテンシャルに目を付けた。
  • 日本はグローバルの中では「モノづくり産業の国」のイメージが強く、(外国人の方に「日本で知っている会社を5社あげて」というと、10人中10人が、100%モノづくり企業だった)その一方で国内の町工場は過去30年で半分以上廃業しているというデータもあり、そのコアである受発注というところをテクノロジーを用いてどう改革していうのかにトライしていきたいという思いがあった。

 

一方の北川は、学生から会社に入るという経験ゼロで起業しており、その経緯を下記のように回答しています。

  • 加藤氏と同じように、「自分が腹落ちして、長期間コミットできる事業、せっかくやるなら深い領域で、我々が取り組むことで世の中がより前に進む感覚がもてるようなものがいい」と思っていた。
  • 大学院時代に「移動体のデータの分析のアルゴリズム(たとえばカメラが人の動きを撮影して、そのデータをどう適切に時系列処理するか、等)を研究していた。」ことからこの領域に関心を持つことになった。
  • 研究は研究で面白かったが「”こういうデータがあったらこういうことが出来る”というのはあるものの、そもそものデータがないという事が多い。であればオープンなプラットフォームを作れば、移動という普遍的な人間が必ず行うことの大きな課題をちょっとでも前に進められるんじゃないか」と思い、起業をした。

 

「学生起業」という手段を選んだ理由

ここで坂本氏から質問。

(先入観ですが、と前置きを入れて)「学生起業です」みたいな人の話を、果たして車のメ―カーや保険会社の人が聞いてくれるのかという見方も、無いことはないと思う。なのでよく選択されたなと思うのですが、そこは迷いとかはなかったのか?

 

北川の回答は、「あまり深く考えるタイプではなく、起業していいかという迷いはあまりありませんでした。また、留学していた際に”やりたいことがあれば自分でやる”という風土があったので、そこは特に違和感はなかった」というものでした。しかし「大企業の方が話を聞いてくださるか」という点になると、当初プロダクトも無い中ではなかなか聞いてくれないことも多かったといいます。

 

”ニワトリたまご”問題

データを集めたビジネスをする場合、データが集まれば「こういうことできる」と言えるが、そもそもデータを集める為には「データが集まってこういうことやってます」という事例が出来てないとダメ、というような、いわゆる”ニワトリたまご”(卵が先か、ニワトリが先か)の状況になりがちです。

どうやってそのハードルを乗り越えられたのか?

 

北川

多くの場合、起業するタイミングでは、マーケットの課題があってそれに対するソリューションを考えると思うのですが、私は少し違っていました。安全運転が世の中に足りてないと思ったから起業した訳ではなく、どちらかというとオープンなデータプラットフォームというのが自動運転などが普及した世界では必要で、それはメーカー等が縦割りにつくるんじゃなく、オープンである必要があるという将来のあるべき像から逆算して起業しました。で、そのプラットフォームを今何に使って課題解決をするかというと、そもそも可視化されていないフリートマネジメントや、安全運転を促すサービス等、逆算して考えています。

ですので変な話、我々がやらなくても絶対こうなるという腹落ち感があるので、それを我々と組むことでちょっと早く実現できるとか、より良い形にしていくというのを淡々と実行してくという感じです。

 

課題ドリブンを大事にしたい

続けて「加藤氏は起業するきっかけや、人に相談するようなものはあったのか」という質問に移りました。

加藤氏の回答も「起業に対しての迷いはなかった」「人に相談というよりは、ニーズがどれだけあるのかというのを前職のプロジェクトをやりながらお客様にひたすらヒアリングしました。工場の方のところにも勝手に行き、現場でどうやって物を買っているのか、何が大変なのか等を聞くために、町工場をかなり回りました。」というものでした。

また、加藤氏の場合、最初はプロダクトが何もない状態でお客様にニーズ感をさぐるという意味では北川と同じですが、その際キャディでは課題に対して「人が手を動かして」対応していたそう。

 

加藤

弊社の場合、3D図面のデータをアップロードすると、それをリアルタイムで解析し、全国の町工場の原価を自動で計算して価格をプライシングし瞬時に見積もりを出す、というプロダクトを提供しているのですが、もちろん最初はそれも無い状態でした。ですが、キャディがとても大事にしていることが、プロダクトもすべて課題ドリブンでいきたい、というところなんです。調達という業務は、自動で見積られたらすべての課題が解決するかというとそういう話ではありません。町工場でよくあるのが、一社のお客様にすごく依存しており、言われたもの全部つくらなければいけない。しかし町工場ごとに得意不得意な分野がそれぞれあるため、不得意なものをつくっているとコストあがってしまいさらには価格を叩かれて、結果赤字になる。この構造自体が課題であると思っていました。

それをスムーズにするための1つとして、テクノロジーも大事ですが、意外と人手でもできるんですよね。ですので、最初は大企業から案件をいただき、それを流して、作ってもらって、みたいなことをテクノロジーなしでやっていました。そして次第にテクノロジーでプロダクトに置き換えていくという流れです。

 

提携先ニーズの探り方

大手提携先の場合、スマートドライブでは、どのようにニーズを探っているのか。

北川の回答は、「明確に何が起きていて何が足りていないかを把握されている方には、うちで出来る出来ないという話ができるが、半分近くの提携先は”何をしたら良いのかわかってないけど、とにかくやらなきゃいけない”と思ってる人が多い」というもの。

 

北川

すごく雑にいうと、「上司にいきなりMaaSやれって言われたけどよく分かりません」みたいなものです。私はそういう方はすごく貴重というか大切だと思っています。やっぱり皆さん素晴らしいリソースや技術をもっていらっしゃるんです。ただビジョンや事例が分からないから、どの山にどう登っていいかわからないだけで、登る体力とか登っていけるリソースはあるので、そこをしっかり我々がガイドできるとより産業に貢献できると思っています。

 

確かに「新規事業やれ」と言われたけど、いままでずっと1つの業務しかしてなかったから分からない、業界とか会社がなにやってるのか知らない、、、というのは容易に想像がつきます。

 

北川

私は方向性を決めるとか、逆算してリソースを集めていくことが得意なんですが、当然そのお客様の課題を解決するのがビジネスでは一番大事ですよね。私は幸いにしてチームがとても優秀で、お客様の課題を聞きまわり、実際に弊社の技術で何の課題がどうやって解決できるのかということにひたすら頭をつかっているメンバーがいるんです。

そういうメンバーがリアルな課題を知っているからこそ、大企業の方を巻き込めているのではないかと思っています。

 

起業後に直面した、想定していなかった困難

両名とも上手くいってる話だけではなく【起業してみたら思ってもみなかった大変なこと】というものはないのでしょうか。

実は加藤氏も北川も「だいたい毎月なにかしらある」「びっくりするくらい全部の失敗をしている」とのこと。

 

加藤

一番最初の頃は、「コストを下げる」部分のバリューを一番大事にしていました。

お客様から事前に図面データをもらい、町工場を20社くらいまわって、3社に発注してつくってもらったんですが、納品日の前日に3社とも製品が届き、開けてみたら全部品質不良でした。品質不良の内容が3社とも全然違うんです。塗装の剥げとか、穴のサイズがちょっと違うとか。その中でも穴のサイズが少し小さいという不良品が一番直せそうだったので、ホームセンターにいって工具を買い穴のサイズを広げて納品しました。

その時に思ったのが、当初は「コスト」のところを一番のバリューとして見ていたのですが、ものづくりはQCD(Quality Cost Delivery)が重要で、そのQuality(質)のところがすごく難しいんだなというのを知り、そこから、Qualityをどうやって担保していくかが大事だなと考えるようになりました。ですが一個一個検査を行うのでは業務が回らなくなるので、どうやってそれをデータ化していくか、仕組みとして減らしていくかということにをものすごく注力しました。

一番重要な要素は、両者がもっている情報の非対称性が非常に大きいということなんです。品質の良い悪いではなく、発注者や供給者ごとに持っている「当たり前の品質」にはいろんなパラメーターがあり、その認識の齟齬によって不良が起こる。

我々がやっているのは、どこが得意かという事をまとめていき、得意な分野だけに寄せていく、ということ。また、そういった情報は図面やデータには落とされていないので、それを自動で翻訳していく、ということです。

コストを出すだけではなく、それぞれのお客様のこの仕様要件ってどういう意味だろう?という標準化・翻訳に力を入れています。

 

北川

弊社も似たようなエピソードがあります。弊社は、1人目の社員がデザイナーで、2人目の社員が、データサイエンティストで博士号をもっているメンバー。3人目が前職googleで人事をやっていたメンバーでして、その3人で一番最初にやった仕事が、不良対応でした。明日実証実験が始まるというタイミングで、使用するデバイスのケースが壊れていることが分かり、週末に3人で集まって東急ハンズでヤスリ買い、綺麗に塗装して出荷するという、人事でもデザインでも、もちろんデータ分析でもない作業でした。

ただ、そういうハードシングス的なことは多々あるんですが、ある意味慣れるというか。

95%くらいは上手くいかないものだと思っていれば、方向性さえ間違ってなければいつかは上手くいくだろうと考えるようになり、あまり気にしなくなりましたね。

どちらかというと、我々が実現したいビジョンに遠ざかるような、、たとえば先ほどオープンプラットフォームが必要だと申し上げましたが、事業をやっていると、「うちだけに提供してくれたら大量発注してあげるよ」とか、そういう話があったりするわけです。しかし、最初に楽な方法を取ってしまうと、後で僕らの未来が狭まる。そこは歯を食いしばって頑張るしかない、というのが大事かもしれないですね。

 

巨大市場・課題に挑戦しているからこそのやりがい

辛いことがありながらも今にこやかに壇上に立っているのは、それに見合う、もしくはそれ以上のやりがいのようなリターンがあるからなのでしょうか。現在、挑戦していることと、とやりがいについて、お二人の考えを聞いていきます。

 

加藤氏の回答は以下のようなポイントでした。

  • 「変えられるんだな」という実感が、モチベーションになり、動力でもある。
  • パートナー企業から「今年キャディなかったら危なかったよ」「キャディは業界の救世主である」という言葉をいただけた。
  • 強みがある会社が業界の構造によって廃業してしまう、という状況を是正していける。
  • 目の前のパートナー企業が、設備投資をしていく、人を採用する、等の前向きな話をしてくれるのは、すごく楽しい。一番やりがいを感じるところ。

 

北川は下記のように続きます。

  • 一番先頭を走っている人に一番情報が入って来ると思うので、そこをとても意識している。なんとか歯を食いしばってできるだけ前を走ると、どんどん情報が入ってきて、世界が広がる。より可能性を感じる。
  • 運が良かったり、パートナーとか従業員のメンバーに恵まれたというのもあるが、突き詰めてやっていれば、ますます可能性に気がついて、世界がどんどん広がっていく感じがある。

 

また、続けてこのように語りました。

 

北川

結局やることは足元の課題解決の積み重ねで、どんな業務であっても大変だと思います。そのような時に巨大産業でよかったなと思うのは、例えば辛いことがあっても、「私が登ってるのは小さい山だな」と思うとやっぱり辛いなと思うかもしれないですが、富士山や、もっと大きいグローバルな山を登ってたら、「私が登ってるのは大きい山だからまだまだ頑張れる。こんな道半ばで弱音なんか言ってられない」と思うことができます。山を登るのはどちらにしろ大変ですが、ちゃんと頂上にピン立てして登り続けられるかは、やっぱり大きい産業だからこそだなというのはあります。

このような業界で、山を登っていく途中で解決できる課題が、先ほど加藤さんが仰っていた「工場を救う」もそうだと思うのですが、スマートドライブだと、導入するととりあえず事故が2割くらい減らすことができるので、実際に人の命を救えるとか。そこが最終ゴールじゃないんですが、その過程がすごく社会的にも意義があるからこそ大きい産業になっている訳であって、これは巨大産業ならではの面白さだなと思います。

採用に対する影響はあるのか

最後に坂本氏は、「両企業とも優秀なメンバーをかなり採用しているイメージがある」ことから、”大きいところ、高いところを目指す”という会社のビジョンは、採用にも関連しているという感覚はあるのか?という質問を投げかけました。

 

加藤氏は、「もちろんある」と回答。優秀な方というのは難しい課題にチャレンジしたいという傾向がつよく、大きな市場へのチャレンジの場合、「こうなるべき」というビジョンはありながらも、「3年後がどう変わっているかは、やってみないとわからないし、複雑性がきわめて高い市場なので、そこをやりがいにしてやってるメンバーはものすごく多い」とのことでした。

 

北川も次のように続けています。

 

北川

私もチャレンジやビジョンは人を惹きつけるポイントだと思います。全く新しい技術を0からつくっていくというよりは、ありものをうまく組み合わせて発展させていくことが多いので、今の技術力や事業開発力、営業力を、どういう社会課題の解決に紐づけていくか、と考えています。こういった、「社会の課題を解決したい」という想いも採用時にもすごく効くと思います。

また、「社会課題を解決したい」というマインドだけではなく、ちゃんとビジネスとしても伸ばしたい。という方は、お会いしていても純粋に気持ちがいい方が多い。

ですので、私自身そういう方たちと一緒に働けるのも楽しいですね。

 

 

ここでセッションの時間は終了となりましたが、

この後の時間も、会場では来場者の方との質疑応答等が続き、非常に熱気のあるセッションとなりました。WAFは今回で15回目の開催ということで、イベント全体としても3700名強の来場があり、今後ますます「データと人の繋がり」は社会をアップデートしていくことを感じさせるカンファレンスとなりました。

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