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自動運転やMaaSは今後どうなる?オンライン Q&Aセッションを開催しました

こんにちは、スマートドライブ人事の永井です。

最近はコロナウイルス第二波が世の中を騒然とさせていますが、みなさまにおかれましてお変わりないでしょうか。

さて、今日は7月29日に開催させていただいた「Mobility Transformation Meet Up Vol.1」について簡単にご報告させていただこうと思います。
(詳細レポートはこちらをどうぞ)

なお、弊社では不定期ですが今回のようなセミナーを開催しておりますので、今後のセミナーについてご興味がある方はぜひ「Mobility Transformation 2020」ウェブサイトをチェックしてみてください。

 

さて、今回の「Mobility Transformation Meet Up Vol.1」ですが、Meet Upと題してはいるものの、もちろんこれはオンライン上のことでして、当日はZoom上で弊社代表の北川が、ご参加いただいた100名近くの方々からお寄せいただいたご質問にお答えしていくというコンテンツを提供させていただきました。

モビリティ業界でお仕事をされていらっしゃる方々はもちろん、それ以外の業界の方々まで幅広いプロフェッショナルにご参加いただき、今後のモビリティ業界の行末についてお話しさせていただいたわけですが、特に質問が多かった3つの事柄について、本エントリーでも紹介させてください。

Q 1. 日本における自動運転の実現について

自動運転は近年モビリティ業界におけるホットトピックの1つであり続けていると思いますが、今回のセミナーにご参加いただいた方々のみならず、広く一般の方々も「いつ頃、どうなっていくんだろう」と心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。

以下がセミナー時に弊社北川が説明資料として使ったスライドですが、完成車メーカー各社によってもちろんロードマップは違うものの、官民ITSl構想という政府が出しているローロマップでは、高速道路におけるレベル4の自動運転が2025年から開始され、レベル5の自動運転に関しては2030年以降と想定されています。

現在も、渋滞時に前の車に追尾したり、車線をキープしたり、そういったレベル2までの運転支援機能は主に高速道路において活用されていますが、運転手は常に注意を払いつつ、危険時にはすぐにハンドル操作やブレーキングなど迅速に対処することが求められています。

一方で、レベル4というのは、特定の場所においては(e.g. 高速道路上で区間限定した特区など)、運転手には運転対応が求められておらず、その特定領域内では運転以外のことに従事していてもよく、緊急時にもシステムが対応することが想定されているというレベルのようです。許可されたエリアにおいては無人での走行もOKということなので、このレベルからは商用利用におけるニーズに対応できるレベルと言えそうですよね。

その手前のレベル3については、今年2020年4月1日の「道路交通法」「道路運送車両法」の改正をふまえて、公道でのレベル3自動運転が解禁されました。

その法改正やレベル3自動運転に伴う課題などについては、弊社が運営する「SmartDrive Magazine」の以下の記事もぜひ参考にしてみてください。

AIによる自動運転時代に向けてーー対応が迫られる法整備

今年や来年には、複数の完成車メーカーからレベル3搭載の新製品を市場に投入していく計画があるようですが、一般の人々にはどう受け止められるのか、関連する事故などが起きないのか、注目が集まるところですね。

また、事故時の法的な責任などについても言及がありましたが、上記の記事でも扱っているように「トロッコ問題」的な観点なども含め、このあたりの整備にも慎重な検討が必要でしょうし、時間がかかるところなのだとも思います。

最後に、欧米と日本の道路の作り方の違いにも触れられていましたが、特に都内(都心)は道が毛細血管のように張り巡らされていますし、そもそも道幅が狭い道路も多く、それなのに交通量が多いという、なかなか自動運転泣かせの環境でもあるとは思うので、2025年〜2030年あたりというのは、やはり高速道路や一部幹線道路などにおいて、それなりにレベル4の自動運転が活用され始めているというようなイメージかもしれないですね。

また、一般人における自家用車としての利用となると、さらにもう少し足は長そうな印象があります。そこには「買い替えサイクル」が大きく影響していると思うのですが、多くの人は簡単に車を買い換えないからですね。現状は平均で7年ほどと言われていて、つまり多くの人は一度車を買い換えると平均して7年くらい乗り続けるということです。もちろん、毎年買い替えてるというような人たちも一部いるとは思いますが、一般家庭においては経済的な制約もありますし、大半の人はスマホを買い換えるようにはいきませんよね。

つまり、たとえば今すぐレベル4の自動運転の車が市場に投入されたとしても、だからといって一般の人たちがいきなり押し寄せて買い換えるかといえばそうではないだろうことや、発売当初は価格帯としてもそれなりの高級車として扱われるでしょうから、一般普及という意味では上記のロードマップよりもさらに遅くなる可能性が高いのではないかと想像しました。

Q2. コロナをふまえてモビリティはどのような変わっていくか

みなさんも個々人の体験として、コロナ前というか、今年の初めごろまでの世界のスタンダードと、今のそれとは大きな解離があり、人々の生活スタイルや価値観に大きな変化が起こった(今も起こり続けている)と感じていらっしゃるのではないかと思います。

今回の新型コロナウイルスのワクチンが世界に供給された後に、世の中が以前のように戻るのかどうかや、また新たな感染症が出てきて激震が走るのかなど、そのあたりは誰にもわからないわけですが、少なくともグローバル社会における感染症の脅威的な感染拡大のスピードや、各国で足並みを揃えた感染対策を実行していく困難さなど、今回の新型コロナウイルスが人類に対して突きつけた課題は、計り知れないものだったと感じています。

下記は、コロナ禍において生まれた感染者搬送車両ということで、HONDA社、ISUZU社からそれぞれ販売されているものですが、最近ではタクシーなどでもしっかり飛沫感染対策をしている車両も見かけるようになりましたし、飲食店やコンビニなどはもちろん、大手百貨店やモールなどに至るまで、できる範囲ではあったとしても感染対策をしているのが常態化したように見受けられます。

 

また、下は出勤用のオンデマンドタクシーですが、利用シーンとしては、電車通勤を控えて同じオフィス(または近隣のオフィス)に通勤する人たちが一緒に出社するというような時に使うイメージですが、もちろんシェアする同乗者に感染者がいないことが前提としたサービスかと思います。

同乗者に感染者がいた場合はむしろ「三密待ったなし」の状況になってしまうわけですが、感染していないことが前提となる環境においてはそれなりの利便性を発揮しそうですし、会社の福利厚生の一環として社内サービスとして使うということもあり得るでしょう。

 

また、下はタクシー会社による買い物代行や薬の受け取りサービスですが、外出リスクが常にある中で、こういったサービスの恩恵を受ける方はそれなりの母数いそうですよね。高齢者は特に身体的な困難さ、そして感染における重症化リスクの高さという2つの意味でこういったサービスに価値を感じるのではないかと思います。

こういった感染対策車両やサービスの普及は今後も進んでいきそうな機運はありますし、新型コロナウイルスが人類における最後の感染症となる可能性は限りなく小さい(i.e. 遠からずまた別の感染症が流行ることになる可能性が十分ある)と思うので、感染対策というのは感染症がブレイクアウトした時のみ行うものではなく、むしろ平常時からやっておけば緊急時に慌てなくて済むというメリットがあることを考えると、今後は常に一定の感染対策をしながら生活するというのが、世界のスタンダードになっていくのかもしれないとも思います。

シェアリングについては、 「withコロナにおいてカーシェアはさらに普及していくのか」というご質問が複数名の方からありましたが、カーシェアですと不特定多数の方が利用するという性質上、感染対策的には難しいサービス形態ではあるので、コンシューマーにおいても利用することへの心理的なハードルは上がってしまっているだろうというお話をさせていただきました。

Q3. MaaSは今後どのようになっていくか

「MaaS」の定義や解釈は人それぞれ幅広いかと思いますが、わかりやすい一例として MaaS Global というフィンランドのベンチャー企業が提供している「Whim」というサービスがありますが、下の図内の「これから」にあるMaaS事業者として、一般コンシューマーに一番近い立ち位置でインターフェースとなってサービスを提供する事業者がさらに出てくる傾向にあるのではないかと思います。

Whimにおいては、毎月定額の料金を支払うことでポイントが取得でき、そのポイントを使って自転車、路面電車、鉄道、バス、タクシーなどの交通手段をワンストップで検索・予約・決済できるようなサービスになっているわけですが、まさにコンシューマー目線というか、コンシューマーユーザーにおける利用しやすさに焦点を当てたサービスなわけです。

ただ、日本においては、そもそも公共交通機関のサービスレベルが世界的に見ても非常に高く、時間通りかつ信頼できるものなので、いきなりMaaS事業者が登場してすべてを統合したようなサービスをつくるというシナリオは考えにくいかもしれませんね。当面は各社が出しているアプリ/Webサービスなどでそれぞれ個別に購入・予約したりということが続くかと思いますが、例えば、みなさんがGoogle Mapでルート検索を行った際に、Google Mapアプリ上でそのルートの交通機関(地下鉄、バス、JR、飛行機など)の予約と支払いなどがそのままできてしまうという形になると、Google はMaaS事業者とも認識されるようになるということかと思います。

あとは、従来からある自家用車を購入して車を利用するというシーンを考えた時に、購入は車ディーラーで、保険はネットで別途(ディーラーでそのまま購入する人も多いと思いますが)、購入後は、給油や充電はそれぞれのスタンドで、オイル・タイヤ交換や車検はディーラーやオートバックスなどのような店舗、整備工場などで、そして買い替え時にはまたディーラーへ、と様々な事業者が個別にタッチポイントを持ってコンシューマーに関っているわけですが、このあたりのタッチポイントを集約し、コンシューマー個々人にパーソナライズした形で最適と思われるものを提案していくようなニーズは現時点でもありますし、それをMaaS事業として扱っていく事業者が出てくるのではないかという話がありました。

弊社スマートドライブも、上の図の右側の赤点線で囲った領域が事業のメインドメインとなっていくと考えていますが、コンシューマーとのタッチポイントは直接であったり、他のMaaS事業者と連携したやり方であったりと、様々出てくると思いますが、ポイントとしては、従来の完成車メーカーをはじめとした上記プレイヤー各社とコンシューマーをつなぐハブになるプレイヤーが出てくるということではないかと思います。

そうなると、これまで完成車メーカーをはじめ各事業者は、コンシューマーとのタッチポイント(e.g. リテール販売)を残しつつも、一方でモビリティ業界のプラットフォーマーやMaaS事業者向けのビジネスが増えてくるような流れになっていくのかもしれません。そういった動きにより、今後ますます各事業者間の協業・共創が進んでいくことになるというのが、直近のトレンドの1つかもしれません。

また、世界的な傾向として、コロナ禍によって人の外出量(屋外での移動量)は、コロナ以前よりもかなり減っているとは思いますが、一方でECが伸長していることからも分かるように、モノの移動(輸送)はむしろ増えているのだろうと思います。人が動く量を減らすと、結果としてモノの移動量が増えて、2つの総量としてはある程度均衡が保たれているという、そんな状態なのかもしれません。

コロナは都市部集中型ライフスタイルを変えるのか

最後に、やや切り口の違うトピックに触れたいと思いますが、ニュースやメディアでみなさんも目にしたことがあると思いますが、コロナ禍やそれに伴う急速なリモートワークの社会的認知の獲得をとおして、都市部から離れ地方に移住する人たちが話題になりました。

そういった人たちがこれまでに実際にどれくらいの数にのぼるのかはわかりませんが、まだ実際には行動に移してない人たちの中でも、「オフィスに行かなくても働けるのであれば、、、」と考えたことがある人は多いでしょうし、今まさに家族で相談しているという人もいるでしょう。

仕事を求めて地方から都市部に出てくる、人も仕事も都市部に集中する、という戦後の資本主義社会の中で続いていたトレンドが、大袈裟に言えば、一旦ピークアウトしたという格好になったのかもしれません。

地方の生活は、都市部と違い、少なくとも家族に1台は車を持ち、場合によっては1人1台が当たり前というところもあるので、地方生活における移動は基本的に自家用車での移動のことを指すことが多いと思います。

地方は、都市部と違い、地下鉄やバスなどの公共交通機関が網の目のようにあるわけではなく、本数も限られているので、結果として自家用車での移動の方が圧倒的に便利だというケースが多いでしょう。道路の渋滞も比較的穏やかで、週末の外出なども家族で車に乗って出かけることがほとんどだったりなど、仕事や余暇の移動の概念自体に、都市生活でのそれとのギャップが大きくあるように思えます。

今後5年、10年という時間軸で見た時にどうなっていくのかは誰にもわかりませんが、もしリモートワークがさらに市民権を得ていき、感染症リスクが顕在化していない状況下においてもスタンダードな働き方として定着していくのであれば、それに伴って人の生活スタイルは大きく変わる可能性があるということが示唆されたのが、2020年という、奇しくも東京オリンピック(開催予定だった)の年になったのだと思います。

そういった観点から考えた際のMaaSであったり今後の人の移動というのは、都市部偏重スタイルが続いた場合のそれとは、大きく異なる景観になるのかもしれないですね。

皆様は、どうお考えでしょう?

 

 

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