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【社員インタビュー】CFOの役割は、コーポレート領域でCEOを補完すること

今回のInterviewee:
執行役員CFO 高橋 幹太(たかはし かんた)

会計士を志したきっかけは?

高校時代に話は遡るのですが、自分は高校から大学へはいわゆるエスカレーターで進学したということもあって、大学ではしっかり勉強できる対象を見つけてがんばろうと思っていました。専攻は法学部で、多くの法学部生がそうであるように、自分も最初は弁護士を目指して法律の勉強をしていました。

ただ、大学に入って法律の勉強をしつつ改めて考えてみると、自分は小さい頃から数字を扱う方が得意だったし、法律とかよりもそっちの方が仕事にする上でも自分に向いてるのではないかと改めて考えました。

そこで、その方向性で学生のうちから勉強できて将来の就職に直結する資格をと考えた時に、会計士や税理士などを思い浮かべたわけですが、結果的には会計士にしようと決めたのが大学2年生の時で、会計士予備校にも通い始めてダブルスクールになりました。

当時自分のまわりには資格の勉強をしている人たちが多くて、それこそ弁護士の勉強をしている人たちは大学1年生の頃からかなり本格的に勉強していましたし、そいういう人たちを横目にしながら、自分も何かやらないとまずいなという危機感がありました。自分も何か手に職をつけられるような勉強をしていかなとって思っていました。

そういった意味では、個人的にすごく会計士に興味があったというよりは、自分も何か勉強しないとまずいと感じていた中で、やるからにはできるだけ自分が得意なことで、かつ将来食いっぱぐれずにすむようなものと考えた時に、当時の自分の答えとしては会計士だったということですかね(笑)

会計士試験の勉強はどうやって?

最近だと、簿記や会計士試験をための学習用スマホアプリや動画学習プラットフォームなどもたくさんありますし、以前と比べて勉強の仕方も多様化していると思いますが、自分が勉強していた当時は、いわゆる会計士予備校に通って勉強するのが一般的でした。もちろん当時から独学で勉強している人たちもたくさんいましたが、予備校に通うメリットは、試験科目をバランスよく勉強できるカリキュラムで進めてくれるので、ちゃんと網羅的に勉強することができるあたりですかね。

大学3年生くらいからは大学の単位はほとんど取り終わっていたので、日々のほとんどは予備校で自習という感じの生活でした。予備校にはコースもいろいろあって、1年、1.5年、2年と3パターンの期間のコースが当時は設けられていたのですが、自分は2年コースを受講しました。それで、大学4年生の時に初めて会計士試験を受けたんですが、試験には短答式と論文式の2つがありまして、初回受験時は短答式で落ちてしまって「ああ、これくらいの勉強量だと落ちるんだな」というのが実感できました(笑)

それで翌年、大学は卒業してしまっていたわけですが、2回目の受験をして、無事短答・論文両方合格できました。当時は会計士試験に合格する人も比較的少なかったというものあり、試験合格者の就職マーケットではかなり売り手市場で試験にさえ合格していれば、大抵どこの監査法人でも採用はしてくれるという状況だったと思います。

当時の自分はアーサーアンダーセン系列の監査法人(現あずさ監査法人)に就職することになったのですが、監査法人の事業内容自体はどこもあまり変わらないので、あとは雰囲気とかカルチャーのようなソフト面で選んでいったわけですが、面接でお会いした人たちの雰囲気から自分に一番合いそうだなと感じて決めました。

会計士としてのキャリア

監査法人には、入所後4、5年でやめていくという人たちもいますが、自分の場合はある程度腰を落ち着けて経験を積んで、自分が得意な領域を見つけてから次のことを考えようと比較的保守的に考えていました。その上で、まずは国内の上場企業を担当する事業部に入って4年間くらいその領域で様々な案件を担当させてもらいました。

ちなみに、弊社取締役の元垣内とは、同監査法人での在籍期間がかぶっていまして、彼は当時外資系を主に担当する事業部にいたので直接面識はなかったのですが、時を経てこうしてまた同じ会社で仕事をすることになるというのは不思議な縁だなと思います。

その後、官公庁案件であったり、世間的にも大注目を浴びた大型IPO案件であったり、M&Aのデューデリジェンスなどに携わったりもしながら、最終的にはIPOを目指すベンチャーをサポートする事業部で働いていました。結果的に、監査法人には11年間も在籍することになりました。

最後に関わっていたスタートアップでは、経営者やCFOなど経営陣と直接一緒に仕事をさせていただいて、その後の自分のキャリアを考える上でも影響が大きかったなと思います。彼らが実際にどのように現場で意思決定をしているのかや、大企業とは違ってかなりのスピード感の中で経営しているので、環境としてはとてもアグレッシブだなと自分の目にも映っていたのですが、次第にそういう環境に自分自信の身を置いてみるということが魅力的に思えるようになっていきました。

あとは、監査法人に10年以上もいて、年齢的には34になる年だったので、そのまま監査法人にい続けるという選択肢も考えてはいたのですが、もし辞めて外で挑戦してみるのであれば、そろそろ出ておかないと年齢的に厳しくなるんじゃないかなとも考えていました。また、もし仮に転職してうまくいかなくても、監査法人にはいつでも戻れるという思いも正直あったので、よくよく考えてみると転職に対するリスクは特になさそうだなとも考えていました。

当時の監査法人の上司にはとても感謝してまして、私が「スタートアップを外からサポートするのではなく、実際に飛び込んでいって当事者として働いてみたくなりました」と正直に伝えたところ、上司として親身になって部下を引き止めてくださり、一方で私の意思が固いことがわかると、それを尊重してくださって監査法人のOBであったりいろんなスタートアップ界隈のネットワークを紹介してくださったりました。また、嫌になったらいつでも戻ってきていいよと優しい言葉もかけていただきまして、本当にうれしかったですね。

スタートアップに飛び込んでみて

監査法人からの転職先として選んだスタートアップは、以前から知り合いだった方が社外監査役として入っていた会社だったというのもあり、そういう意味では真っ新の新しい環境に入っていくというよりは、ある程度デューデリジェンスがされているところに入っていく安心感はありました(笑)

自分が入社した当時は、そのスタートアップは築50-60年くらいの古いマンションの狭い一室でやっていて、トイレも男女共用のものが1つしかなく、社員全員で10人もいないという状況でした。また、ゲーム関連事業がメインだったということもあり、社員のほとんどがゲームクリエイター系の人たちで、いる人たちの雰囲気や働き方も監査法人からはかなり遠いところのものだったので、慣れるまで若干ドギマギしてました(笑)

ただ、ジョインしたフェーズとしては何もないという状況で、当時の自分はまさにそういう環境を求めていたので、管理体制や業務を1からつくっていくところに携わることができました。結果的に4年間ほど在籍した中で、管理業務全般の立ち上げ以外にも、5社の買収や複数の事業譲受けに携わることができましたし、資金調達を含むファイナンスなど、経営メンバーとして事業に深く関わることができたので、とても良い経験になりました。

自分が在籍している間に、経営者の方針で事業内容はどんどん変わっていき、だからこそ経験できたこともあって良かったのですが、その経験をふまえて次は1つの事業にしっかり腰を据えて取り組んでみたいという気持ちが湧きました。事業として社会基盤をつくっていけるような、そういった会社の経営に関わっていきたいという思いの中で、弊社に出会ったという経緯があります。

CFOの役割とは

私が考えるCFOの役割としては、究極的には、社長がCFOに何を期待するかによって変わってくるとは思っています。結局、どこを一番サポートして欲しくて、どこにリソースや知見が足りなくて、そこに対して自分がそのためのスキル・経験があるのか、ということになってくるなと。

一般的に、スタートアップにおいてCFOがカバーしている範囲は非常に多岐に渡りますが、会社によっては経理財務や資金調達、投資、管理系業務の遂行とマネジメント、そして経営企画や戦略立案、人事労務や広報などまでやっている人たちもいたりします。

ファイナンスまわりも、短期・中長期でいろいろありますよね。事業計画やエクイティストーリーに沿ってしかるべきタイミングで資金を調達していく中長期目線のファイナンスもありますし、ごく短期的には週次・月次のキャッシュを見ながら資金繰りを管理していくような動きもあったりすると思います。

まだステージが浅いスタートアップなどでは、管理部の立ち上げから手掛けるということもありますし、取締役会・株主総会の取りまとめと運営、IPO準備や証券会社対応など、本当に幅広いわけですが、CEOや他の経営メンバーの得意領域などによって、CFOとしてどの領域にウエイトを置くのかが変わってくると思います。

また、これらすべての領域において他を圧倒する知見を兼ね備えているという人は珍しいとは思うので、その中でも自分が得意とする領域はどこで、かつ周囲の人たちとうまく補完し合いながらやっていくためにはどこに力を入れると良いかのバランスを考えるのは大切だなと感じています。

自分は元々のバックグラウンドが監査法人であり会計士ではあるので、管理業務を包括的に見るというのはごく自然にやれるところではあったので、そこは少なくともしっかり守備範囲としてやりつつ、逆に資金調達などはあまり経験がなかったので、前職で初めて当事者として携わることになったわけですが、そういった経験の浅い領域にも関わりながら弱点を埋めていくという努力も心がけています。

監査法人の会計士が事業会社に転職すると

経理財務周りの整理や立ち上げ、管理業務をいちから構築していくなどは、監査法人時代の経験でそれなりに蓄積があるでしょうから、そこをもってして事業会社に入った時に即戦力として動くことができるというのは言えるかなと思います。特にスタートアップでは、プロダクトや事業が先で、管理業務の整備が後手に回ることが多い傾向にはあると思うので、そういったところに入っていけば、すぐにバリューを発揮できる土壌はあると思います。

一方で自分が監査法人にいた時代、クライアント企業が資金調達をするのを外部から見てはいたものの、実際に事業会社と投資家がどういった話をしていたのかというのは、実際に事業会社に転職してみて内部の人になるまではわからないことでした。外から見てわかった気になる、と言うと語弊もあるかもしれませんが、当事者として携わってみるということで、見て知っていることと実際にやってみて知っていることにどれだけ差があるのかということを、理解した気がしています。銀行が融資を決める際に実際にどういったところを見ているのかというのも、わかっていたようで意外とわかっていなかったんだなと、事業会社に移ってから気づくこともあったりしました。

スタートアップへの転職を真剣に考えている方は、おそらくできるだけ経営者に近いところで働きたいと考えていらっしゃるでしょうし、事業にコミットするというか、事業判断にも携わっていくような働き方をしたいと思っている人が多かと思います。事業は何でもいいから、とにかく経理財務まわりの監督ができればいいです、という思いでスタートアップに行きたいと言う人はあまりいないと思いますし(笑)

そういう場合は、前述のように、ジョインする会社のCEOや他の経営メンバーと自分のバランスというか、何を期待されて入っていくのか、その期待値は自分と合っているのか、そこに自身のさらなる成長余地があるのか、事業を左右するような重要な意思決定にも絡んでいくことができるのか(ここは自分の努力とパフォーマンス次第のところもあるとは思いますが)などを考えてみるのが良いのではないかと思います。

 

人事のインタビュー後記

弊社CFO高橋のインタビューいかがでしたでしょうか。
個人的には、彼が言っている「究極的にはCEOをいかに支えるのかということ」というメッセージは、示唆に富んでいるなと感じました。

人によって、何が得意で何が苦手かというのはいろんなパターンがあるわけですが、できるだけ得意なことで貢献し、苦手なことはそこが得意な他の人がカバーしてくれると、チームとしては最高の状態だということは、みなさん思うところかと思います。

一方で、それをある組織全体において実践するというのは、簡単なことではないと感じます。人間の能力の凹凸が、まさにパズルのピースが合うようにそのままピタッとはまるということはなく、各人が周囲を見渡しながら自分の凹凸の具合をうまいこと調整しながら支え合ったり、時にぶつかったり(笑)、しているのだと思います。

CFOは、CEOに非常に近い立ち位置から俯瞰して組織を見渡し、会社を運営し事業を継続的に成長させて行く上で、CEOやCOOと自分の凹凸を調整しながらコーポレート側で補完的な存在になるというのが主要なミッションの1つなのだと思いますが、調整できる/しなければいけないカバレッジも非常広く、高橋のような人材は組織内における versatility(汎用的に力を発揮する能力)が極めて高いのだということを、話していて改めて理解しました。

極論、求められていない能力が非常に高くても、それは有効活用されません。良い例えかわかりませんが、闇夜の森を抜ける際に大活躍するサーチライトは、日中は特に出番がありません。闇夜であっても、座って食事をする際は、方向性を持って強く遠くまで照らすサーチライトは向いておらず、むしろ周囲をふんわりと照らしてくれるランタンのようなライトの方が適切です。つまり、移動時はサーチライト、休憩時はランタンで、と使い分ける方が良いということになります。

人の能力や特性もこういった側面があるということを、最近はよく考えます。高橋のような人間は、サーチライト機能を併せ持つランタンLEDライトという感じかもしれませんが(笑)、皆がそのようになれるわけでもなかったりするので、もし自分がサーチライトであると認識するなら、闇夜をライトもなしに彷徨う移動中の組織に入っていけば、そこには大活躍できる環境があるということになりますよね。

一方で、すでに多様なライトが充足している組織、または基本移動は日中しかしませんという組織においては、サーチライトの価値は高くなり得ないでしょうから、まず自分は何であるかを正しく見極めること、それが大切なんだなと思います。

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